簡単に言えば、お寺の親子関係だよ。
本末制度(ほんまつせいど)とは
本末制度とは、お寺の格式(階級)を示す言葉の一つです。
総本山、大本山、別格本山、本山、末寺などが格式にあたります。
総本山や、本山、末寺の関係は、親子関係に似たものです。
各宗派は 何々宗の何々派という作りになっていますが、その宗派ごとにこの総本山から末寺までのピラミッドが出来ています。
宗派によっては、総本山、大本山がなかったり、両方あったりなど、立ち位置は違うため厳密にはちがうのですが、本山が、各派の長。総本山、大本山が各宗派の長のように考えると簡単かもしれません。
総本山(そうほんざん)とは
各宗派の本山を取りまとめている寺院のことです。
大本山(だいほんざん)とは
総本山の下に位置し、所属の末寺を統轄する寺院のことです。
別格本山(べっかくほんざん)とは
仏教の各宗派において、大本山(または本山)に準じた待遇を受ける特別な位置づけの寺院のことです。
本山(ほんざん)とは
一宗一派を統轄する寺院のことです。
末寺(まつじ)とは
本山の支配下にある寺院のことです。
歴史
本末関係のはじまり(飛鳥時代以降)
仏教が伝来した時代、日本は、自然災害や疫病や戦争などの災いが頻発しておりました。
それを憂い、天皇は仏教に救いを求め保護しました。
当時の日本内は、いくつかの小国(いまの県のようなもの)に分かれており、大きな都には大きなお寺が建立され、その運用には、税などの免除を受けておりました。
しかし、地方の小さい寺は、国司や豪族よる税の取立てに困っていました。
このため、地方のお寺は、都にある大きなお寺に属することで、大きい寺の国とのつながりを利用して寺を守ることを考えました。こうして、本末関係が生まれていったのです。
地方の小さい寺は所有する土地を大きい寺に寄進し、大きい寺の末寺という形で、形式的に土地管理人となり寺を守りました。
このため、時間とともに本寺が末寺に対し強い力を持つようになり、本寺は末寺からの収入を重視し、経済的な関係が主となりました。
師弟関係から始まった本末関係(室町時代以降)
仏教が日本に根付いていくと、空海や最澄、親鸞といった同じ仏教でも違う解釈をする宗派の開祖が現れます。
この開祖のもとに、教えを請い多くの弟子が集まりました。
弟子たちは、その教えを全国へ伝えていきます。
そのため、師弟としてお寺に親子関係が生まれていきました。
本末制度によるい本末関係 十三宗五十六派(江戸時代以降)
さらにこの、総本山と末寺に至る関係を強くさせたのは、江戸時代の本末制度という制度でした。
この制度は、江戸時代に、江戸幕府が仏教教団を統制するために設けました。
その際に、全ての仏教のお寺を無理やり 十三宗五十六派 に分けました。
これにより、江戸幕府は、各宗派に諸宗末寺帳(本寺と末寺の一覧)を作らせ、お寺のいわば連絡網を作り、伝令を出すと、総本山より末寺まで伝わるようになりました。
また、本寺と末寺の関係が明確になったことで、本寺への権力をあつめ、本寺を江戸幕府が管理することで、末端まで支配したのです。
こうして、現在の総本山などの格式として残ったのです。
歴史(補足)
宗教団体法による本末関係 二十八宗派(昭和時代)
昭和14年宗教団体法が出来たことにより、それまで十三宗五十六派だったものが二十八宗派に統一されました。
宗教の自由(現在)
現在は、宗教の自由があるため、各宗派はこれ以上となっています。
諸宗末寺帳(しょしゅう-まつじちょう)とは
諸宗末寺帳とは 江戸時代 寛永9~10年(1632~33年)江戸幕府の命令で、全国の各宗派(天台宗、浄土真宗を除く)から提出されたお寺の一覧です。
これは、末寺がどの本寺の配下なのかの一覧表で、末寺の情報として、所在地・寺名・寺領石高が記載されています。
現存最古の末寺帳で、江戸時代初期の寺院の本末関係を知るための基本資料です。平成元年国の重要文化財に指定されました。
日本中にある一万二千以上のお寺が、十三宗五十六派に分かれて記載されていたんだからすごいよね。
総本山~末寺関係
- 総本山
- 大本山
- 別格本山
- 本山
- 本寺
- 中本寺
- 小本寺
- 直末寺
- 孫末寺
- 彦末寺
宗派によっては、総本山がないところもあるよ。
十三宗五六派 二十八派 比較表
十三宗五十六派 | 二十八宗派 | 備考 | |
十三宗名 | 五十六派 | ||
法相宗 | 法相宗 | 法相宗 | |
華厳宗 | 華厳宗 | 華厳宗 | |
律宗 | 律宗 | 律宗 | |
天台宗 |
天台宗 | 天台宗 | |
天台寺門宗 | |||
天台真盛宗 | |||
真言宗 | 古義真言宗 | 真言宗 | |
真言宗東寺派 | |||
真言宗善通寺派 | |||
真言宗山階派 | |||
真言宗醍醐派 | |||
真言宗泉涌寺派 | |||
新義真言宗豊山派 (現、真言宗豊山派) | |||
新義真言宗智山派 (現、真言宗智山派) | |||
真言律宗 | 真言律宗 | ||
融通念仏宗 | 融通念仏宗 | 融通念仏宗 | |
浄土宗 | 浄土宗 | 浄土宗 | |
西山浄土宗 | 浄土宗西山派 | ||
浄土宗西山深草派 | |||
浄土宗西山禅林寺派 | |||
浄土真宗 | 浄土真宗本願寺派 | 浄土真宗本願寺派 | |
真宗大谷派 | 真宗大谷派 | ||
真宗高田派 | 真宗高田派 | ||
真宗佛光寺派 | 真宗佛光寺派 | ||
真宗興正派 | 真宗興正派 | ||
真宗木辺派 | 真宗木辺派 | ||
真宗出雲路派 | 真宗出雲路派 | ||
真宗誠照寺派 | 真宗誠照寺派 | ||
真宗三門徒派 | 真宗三門徒派 | ||
真宗山元派 | 真宗山元派 | ||
臨済宗 | 臨済宗建仁寺派 | 臨済宗 | |
臨済宗東福寺派 | |||
臨済宗建長寺派 | |||
臨済宗円覚寺派 | |||
臨済宗南禅寺派 | |||
臨済宗大徳寺派 | |||
臨済宗向嶽寺派 | |||
臨済宗妙心寺派 | |||
臨済宗天龍寺派 | |||
臨済宗永源寺派 | |||
臨済宗方広寺派 | |||
臨済宗相国寺派 | |||
臨済宗佛通寺派 | |||
臨済宗国泰寺派 | 臨済宗国泰寺派 | ||
曹洞宗 | 曹洞宗 | 曹洞宗 | |
日蓮宗 | ・日蓮宗 | 日蓮宗 | |
・顕本法華宗 | |||
・本門宗 | |||
・日蓮正宗 (1900年本門宗より独立) | 日蓮正宗 | ||
・(旧)本門法華宗 | 法華宗 | ||
・法華宗(本成寺派) | |||
・本妙法華宗(本隆寺派) | |||
・日蓮宗不受不施派 | 本化正宗 | ||
・日蓮宗不受不施講門派 (現、不受不施日蓮講門宗) | |||
時宗 | 時宗 | 時宗 | |
黄檗宗 | 黄檗宗 | 黄檗宗 |
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