国分寺(こくぶんじ)とは

神社仏閣基礎

741年(天平13年)に聖武天皇しょうむてんのうが仏教による国家鎮護こっかちんごのため、日本の各国にお寺が建立されました。

それが、国分寺です。

国分寺は、国分僧寺こくぶんそうじと尼寺である国分尼寺こくぶんにじに分かれており、基本的にはペアで日本各地に建造されました。

また、国分寺の中で総本山となるのは奈良であり、

僧寺においては、東大寺とうだいじ尼寺においては、法華寺ほっけじになります。

その数、日本各地で68か所に建立され、税金や日本国民の労働力をつぎ込んだ国家プロジェクトだったのです。

歴史

国家が乱れた時代

45代天皇 聖武天皇しょうむてんのう(大宝元年(701年) – 天平勝宝8年5月2日(756年6月4日)が、世を治めていたこの時代は、世が乱れておりました。

とくに、頭を悩ませたのは下記の4つの理由でした。

自然災害・・・日照り、台風、地震の発生。そのせいで飢饉ききんが起きました。

伝染病・・・大陸から恐ろしい伝染病である天然痘てんねんとうが伝わり、多くの人々が死にました。

海外との緊張・・・中国のとうと、朝鮮半島ちょうせんはんとうの国、新羅国しらぎこく白村江はくすきのえの戦い(663年)で負けており海を跨いで睨みあいになりました。

反乱・・・天皇の親戚や家来たちによる反乱が起き、激しく戦いました。

人災と病、自然災害が続き人の手では救いのないことが続きました。

唐の仏教政策の影響

聖武天皇は、とう新羅国しらぎこくという大国に負けたことで、その文化の発展に触れ、特に大国である唐に遣唐使けんとうしを送るなど積極的に文化を取り入れました。

その当時、唐は690年に即位した女帝 則天武后そくてんぶこうが仏教による統治を進めており、大雲寺だいうんじという国家の寺を州(中国の県)ごとに建立していました。

聖武天皇から各国への命令

聖武天皇は、この荒れた時代を憂い、唐という発展した国を見習い、仏教に救いを求めたのです。

〇天平9年(737年)
各国ごとに、釈迦如来像と脇侍わきじの菩薩像(普賢菩薩・文殊菩薩)を造像と『大般若経』を写経し納めおくように国司こくしに命じました。

〇天平12年(740年)
各国ごとに、『法華経』10部を写し七重塔を建てるように命じました。

〇天平13年(741年)2月14日(日付は書『類聚三代格』より)
『金光明最勝王経(金光明経)』『妙法蓮華経(法華経)』を写経すること。
国ごとに国分僧寺と国分尼寺を1つずつ設置するように命じました。

このため、国家プロジェクトとして国分僧寺と国分尼寺の建立が始まりました。

また、僧寺には封戸ふうこ50戸と水田10町、尼寺には水田10町を施すこと、僧寺には僧20人・尼寺には尼僧10人を置くことも定められました。

〇天平19年(747年)11月
上記の命令が国に出ていましたが、お金(食料)も人も必要なため、すぐには進みませんでした。
そこで、中央から派遣された郡司に指導させました。
郡司も国分寺が完成したら子供も郡司になれる褒美をもらったので、何とか各国に国分寺が出来ていったのです。

きつねくん
きつねくん

国司とは、いわば地方知事のことで、郡司とは、国家公務員のことだよ。

また、封戸とは、国がお金を出す代わりに、市民と田畑を付けて運用させ、自治していく制度だよ。

その後

やがて、時代が移り中央からの援助が無くなることで国分寺・国分尼寺の多くは廃れていきました。

特に、800年代には、女性は僧侶になるべきでないと、戒律が変わり、僧侶になるための授戒を受けることができなくなる時代があり、国分尼寺を含め多くの尼寺が廃れていきました。

しかし、ほかの宗派で寺を受け継ぐなどし、国分寺の一部は今日でも残り続けています。

特に総国分寺の地位にある東大寺は、現在でも有名です。

建立条件

国家鎮守のため、国家プロジェクトとして建立された国分寺。

勝手に場所を決めたわけではなく、国の安寧のため多くの条件から立地を決めたとされています。

地形的条件

  • 国の建物として、土地を含めて仰ぎ見るのによい地形
  • 水害が長期的にない場所
  • 南面(向)の土地(日当たり良好)
きつねくん
きつねくん

自分の家を建てるのと同じだね。

都市計画的条件

  • 民家より十分に離れた場所
  • 人の集合するのに不便でなく、交通が非常に便利な場所
  • 条里制区画(碁盤の目のような地割)の拘束を甘受すること
たぬきくん
たぬきくん

民家から離れているけど、人が程よく集まれる場所なんだね。

政治的条件

  • 国府(役所)に近いところ(国司が国分寺を監督したことによる)

なぜ68か所?

実は、飛鳥時代から明治初期まで日本の国は、68か国(今の県の考え方)に分かれていました。

これを、令制国りょうせいこくと言いました。

国分寺一覧(都道府県別)

No. 国分寺
国分尼寺名
国分寺創建地 史跡指定
後継寺院
国分尼寺創建地 史跡指定
後継寺院
街道
北海道
青森県
岩手県
宮城県
1 陸奥 仙台市若林区木ノ下 国の史跡 仙台市若林区白萩町 国の史跡 東山道
護国山医王院国分寺 護国山国分尼寺
秋田県
山形県
2 出羽 ?酒田市城輪 国の史跡(堂の前遺跡) 不明 指定なし 東山道
?鶴岡市平形国分 護国山柏山寺 後継なし
福島県
茨城県
3 常陸 石岡市府中 国の特別史跡 石岡市若松 国の特別史跡 東海道
浄瑠璃山東方院国分寺 後継なし
栃木県
4 下野 下野市国分寺 国の史跡 同左 国の史跡 東山道
瑠璃光山安養院国分寺 後継なし
群馬県
5 上野 高崎市東国分 国の史跡 同左 指定なし 東山道
国分寺 後継なし
埼玉県
千葉県
6 安房 館山市国分 千葉県指定史跡 不明 指定なし 東海道
館山市指定史跡 後継なし
日色山国分寺  
7 上総 市原市惣社 国の史跡 市原市国分寺台中央 国の史跡 東海道
医王山清浄院国分寺 後継なし
8 下総 市川市国分 国の史跡 同左 国の史跡 東海道
国分山国分寺 後継なし
東京都
9 武蔵 東京都国分寺市西元町 国の史跡 同左 国の史跡
(国分寺跡に包含)
東海道
医王山最勝院国分寺 後継なし
神奈川県
10 相模 海老名市国分南 国の史跡 海老名市国分北 国の史跡 東海道
東光山医王院国分寺 後継なし
新潟県
11 越後 ?上越市五智・国府 指定なし 不明 指定なし 北陸道
安国山華蔵院国分寺 後継なし
12 佐渡 佐渡市国分寺 国の史跡 不明 指定なし 北陸道
医王山瑠璃光院国分寺 後継なし
富山県
13 越中 高岡市伏木一宮 富山県指定史跡 不明 指定なし 北陸道
国分寺 後継なし
石川県
14 加賀 ?小松市古府町 指定なし 不明 指定なし 北陸道
後継なし 後継なし
15 能登 七尾市国分町 国の史跡 不明 指定なし 北陸道
後継なし 後継なし
福井県
16 若狭 小浜市国分 国の史跡 不明 指定なし 北陸道
護国山国分寺 後継なし
17 越前 不明 指定なし 不明 指定なし 北陸道
護国山国分寺 後継なし
山梨県
18 甲斐 笛吹市一宮町国分 国の史跡 笛吹市一宮町東原 国の史跡 東海道
護国山国分寺 後継なし
長野県
19 信濃 上田市国分 国の史跡 同左 国の史跡(国分寺跡に包含) 東山道
国分寺 後継なし
岐阜県
20 美濃 大垣市青野町 国の史跡 ?不破郡垂井町平尾 指定なし 東山道
金銀山瑠璃光院国分寺 後継なし
21 飛騨 高山市総和町 塔跡は国の史跡 高山市岡本町 高山市指定史跡 東山道
医王山国分寺 (辻ヶ森三社) 建正山国分尼寺
静岡県
22 遠江 磐田市見付 国の特別史跡 不明 指定なし 東海道
參慶山延命院国分寺 後継なし
23 駿河 ?静岡市駿河区大谷 国の史跡(片山廃寺跡) 不明 指定なし 東海道
(伝)龍頭山国分寺 (伝)正覚山菩提樹院
24 伊豆 三島市泉町 国の史跡(塔跡) 三島市南町 指定なし 東海道
宝樹山国分寺 三島山法華寺
愛知県
25 尾張 稲沢市矢合町 国の史跡 ?稲沢市法花寺町 指定なし 東海道
鈴置山国分寺 大齢山法華寺
26 三河 豊川市八幡町 国の史跡 同左 国の史跡 東海道
国府荘山国分寺 後継なし
三重県
27 伊賀 伊賀市西明寺 国の史跡 同左 国の史跡(長楽山廃寺跡) 東海道
上寺山国分寺 龍王山菊昌院法華寺
28 伊勢 鈴鹿市国分町 国の史跡 ?鈴鹿市国分町 指定なし 東海道
護国山人生尹丸刀院国分寺
明星山国分寺 後継なし
常慶山金光明院国分寺
29 志摩 志摩市阿児町国府 三重県指定史跡 不明 指定なし 東海道
護国山国分寺 後継なし
滋賀県
30 近江 ?甲賀市信楽町黄瀬・牧
(紫香楽宮跡内裏野地区)
国の史跡(紫香楽宮跡) 不明 指定なし 東山道
?大津市野郷原・神領
(瀬田廃寺跡)
別所山国分寺 後継なし
?大津市光が丘町
(国昌寺跡推定地)
   
京都府
31 山城 木津川市加茂町例幣 国の史跡(恭仁宮跡(山城国分寺跡)) ?木津川市加茂町法花寺野 指定なし 畿内
国分寺 後継なし
32 丹波 亀岡市千歳町国分 国の史跡 亀岡市河原林町河原尻 指定なし 山陰道
護国山国分寺 後継なし
33 丹後 宮津市国分 国の史跡 不明 指定なし 山陰道
護国山国分寺 後継なし
大阪府
34 河内 柏原市国分東条町 指定なし ?柏原市国分東条町 指定なし 畿内
真言宗河内国分寺 後継なし
35 和泉 和泉市国分町 指定なし なし   畿内
護国山国分寺    
36 摂津 大阪市天王寺区国分町 指定なし ?大阪市東淀川区柴島 指定なし 畿内
天德山国分寺 天平勝寶山法華寺
護国山金剛院国分寺  
兵庫県
37 但馬 豊岡市日高町国分寺 国の史跡 豊岡市日高町水上・山本 指定なし 山陰道
護国山国分寺 天台山法華寺
38 播磨 姫路市御国野町国分寺 国の史跡 同左 指定なし 山陽道
牛堂山国分寺 金剛山徳證寺
39 淡路 南あわじ市八木国分 塔跡は国の史跡 ?南あわじ市八木 指定なし 南海道
護国山国分寺 金雲山理祥院尼ガ寺
奈良県
40 大和 奈良市雑司町 国の史跡 奈良市法華寺町 国の史跡 畿内
東大寺
(総国分寺)
法華寺
(総国分尼寺)
総国分寺
和歌山県
41 紀伊 紀の川市東国分 国の史跡 ?岩出市西国分 指定なし 南海道
八光山医王院国分寺 後継なし
鳥取県
42 因幡 鳥取市国府町国分寺 指定なし ?鳥取市国府町法花寺 指定なし 山陰道
最勝山国分寺 後継なし
43 伯耆 倉吉市国分寺 国の史跡 ?倉吉市国分寺 指定なし 山陰道
護国山国分寺 後継なし
島根県
44 出雲 松江市竹矢町 国の史跡 同左 指定なし 山陰道
後継なし 後継なし
45 石見 浜田市国分町 国の史跡 同左 島根県指定史跡 山陰道
東光山国分寺 良松山光明寺
46 隠岐 隠岐郡隠岐の島町池田 国の史跡 隠岐郡隠岐の島町有木 島根県指定史跡 山陰道
禅尾山国分寺 後継なし
岡山県
47 美作 津山市国分寺 国の史跡 同左 指定なし 山陽道
龍壽山国分寺 後継なし
48 備前 赤磐市馬屋 国の史跡 赤磐市馬屋・穂崎 指定なし 山陽道
金光山圓壽院善教寺 後継なし
49 備中 総社市上林 国の史跡 同左 国の史跡 山陽道
日照山總持院国分寺 後継なし
広島県
50 備後 福山市神辺町下御領 指定なし ?福山市神辺町湯野または西中条 指定なし 山陽道
唐尾山医王院国分寺 後継なし
51 安芸 東広島市西条町吉行 国の史跡 ?東広島市西条町吉行 指定なし 山陽道
金嶽山常光院国分寺 後継なし
山口県
52 周防 防府市国分寺町 国の史跡 同左 指定なし 山陽道
浄瑠璃山国分寺 浄戒山法花寺
53 長門 下関市長府宮の内町 指定なし ?下関市長府安養寺 指定なし 山陽道
浄瑠璃山国分寺 後継なし
徳島県
54 阿波 徳島市国府町矢野 徳島県指定史跡 名西郡石井町石井 国の史跡 南海道
薬王山(法養山)金色院国分寺 後継なし
香川県
55 讃岐 高松市国分寺町国分 国の特別史跡 高松市国分寺町新居 国の史跡 南海道
白牛山千手院国分寺 大慈山法華寺
愛媛県
56 伊予 今治市国分町 塔跡は国の史跡 ?今治市桜井 塔跡は愛媛県指定史跡 南海道
金光山最勝院国分寺 補陀洛山法華寺
高知県
57 土佐 南国市国分 国の史跡 不明 指定なし 南海道
摩尼山宝蔵院国分寺 後継なし
福岡県
58 筑前 太宰府市国分 国の史跡 同左 指定なし 西海道
龍頭光山国分寺 後継なし
59 筑後 久留米市国分町 久留米市指定史跡 ?久留米市国分町 指定なし 西海道
護国山国分寺 後継なし
60 豊前 京都郡みやこ町国分 国の史跡 ?京都郡みやこ町徳政 指定なし 西海道
金光明山国分寺 後継なし
佐賀県
61 肥前 佐賀市大和町尼寺 佐賀市指定史跡 同左 指定なし 西海道
金光明王山国分寺 後継なし
長崎県
62 壱岐島分寺 壱岐市芦辺町国分本村触 長崎県指定史跡 不明 指定なし 西海道
護国山国分寺 後継なし  
63 対馬島分寺 ?対馬市厳原町今屋敷 指定なし 不明 指定なし 西海道
天德山国分寺 後継なし  
熊本県
64 肥後 熊本市中央区出水 指定なし 同左 指定なし 西海道
医王山国分寺 後継なし
大分県
65 豊後 大分市国分 国の史跡 ?大分市国分 指定なし 西海道
医王山国分寺 後継なし
宮崎県
66 日向 西都市三宅 国の史跡 西都市右松 指定なし 西海道
後継なし 後継なし
鹿児島県
67 大隅 霧島市国分中央 国の史跡 不明 指定なし 西海道
後継なし 後継なし
68 薩摩 薩摩川内市国分寺町 国の史跡 ?薩摩川内市天辰町 指定なし 西海道
後継なし 後継なし
沖縄県

コメント

タイトルとURLをコピーしました