勝林寺と言えば、東福寺の北側にある知る人ぞ知る寺院です。
小さいお寺ですが、秋の紅葉が有名で、毎年たくさんの参拝客が紅葉を眺めに足を運びます。
また、毘沙門天でも有名なお寺ですが、
じつは、3体もの毘沙門天が祀られているのです。
今回は、そんな毘沙門堂 勝林寺をご紹介します。
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基本情報
開 創: 天文19年(1550年) 戦国時代
開創者: 東福寺第二百五世住持 高岳令松 禅師
正式名称:慧日山 東福禅寺 塔頭 勝林寺
慧日山 東福禅寺とは、京都市東山区にある臨済宗 東福寺派の大本山の東福寺のことです。
その 塔頭寺院 の一つが 勝林寺なのです。
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見所
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勝林寺の見所は、大きく分けて3つだよ。
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一つ目は、毘沙門天様だよね。
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毘沙門天様が、いたるところにいるんだよね。
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二つ目は、紅葉。
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吉祥紅葉 が秋の庭に色鮮やかに 紅葉 しています。
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三つ目は、座禅・写経体験。
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ネットから予約ができるから、すごくありがたいね。
公式ホームページにわかりやすく書いてあるよ。
所要時間
目安:1時間
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写経・座禅は、別途1時間くらいだよ。
境内地図
由来
東福寺第二百五世住持の 高岳令松 禅師 が、勝林庵として創建しました。
戦国時代の天文19年(1550年)でした。
本堂は、五摂家の一で公家、大檀那(勢力のある檀家)であった近衛家の大玄関を移築したものです。
現在、東福寺に25ある塔頭寺院の一つです。
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大檀那は、現代の会社の大株主みたいなものだよ。
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最初は、庵だったんだね。
なぜ毘沙門堂なのか?
当寺は、一般的な阿弥陀如来様や釈迦如来様などの如来、もしくは、観音様などのの菩薩ではなく、
それは、東福寺の塔頭であることが大きく関係します。
塔頭とは、本寺の敷地内の小寺にあたります。
また、東福寺と勝林寺の地理的な関係を見てください。
東福寺の北に勝林寺が位置していることがわかります。
北は、鬼門と言われ良くないものが来るとされています。
勝林寺も東福寺の一部ですので、全体でみると北を守っていることになるのです。
北を守るのは、四天王の多聞天になりますよね。
多聞天とは、毘沙門天のことですから東福寺を守るため毘沙門天が安置されているのです。
寅の伝説
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勝林寺が寅と密接な関係があるのは、ご存じだと思います。
ひとつは、毘沙門天は日本では、寅が使いとされています。
しかし、それだけではないのです。
江戸時代に独秀令岱禅師という和尚様がいました。
東福寺の塔頭寺院である、勝林寺と海藏院(海蔵院)を再び盛り上げた人物です。
この和尚様、夜寝ていると夢枕に毘沙門天様が立たれて
『東福寺に立派な毘沙門天が眠っている』
と伝えられたのです。
翌日夢のお告げを信じ、お弟子さんを連れて東福寺に出向きます。
そうすると、東福寺の天井の裏から綺麗な毘沙門天立像が見つかったのです。
それが、現在の御本尊様です。
また、この夢枕に毘沙門天様が立たれた時間が、
寅年寅の日寅の刻だったのです。
境内
正門
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正門は、民家の方に行くから、見つけにくいかも。
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2022年の秋の特別拝観時は、東門からしか入れませんでした。
拝観時は、門が二つあるので注意してください。
東門
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2022年秋の特別拝観時は、東門から入った先で拝観券を購入しました。
手水(水意舟)
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弘化四年 丁未吉日と記載あり。
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美しい花で彩られているね。
玄関
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美しい紅葉に囲まれた玄関です。
本堂中央の間
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毘沙門天立像(御前立)(中央)
現在中央に安置されている毘沙門天立像は、勝林寺が建立当時に御本尊として祀られていたものです。
平安時代の作品とされ、空海(弘法大師)が彫り上げたと伝わっています。
虎の大襖絵
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正面右側に一頭、正面左側に二頭の虎が描かれている。
その堂々とした出で立ちは見事で、力強い。
大正15年(1926年)に、日本画家の櫟文峰の作品。
右の一頭は、毘沙門天を現し、左の二頭は、吉祥天と善膩師童子の家族を現している。
![きつねくん](https://kitsune-hudou.com/wp-content/uploads/2021/10/kitune.png)
御朱印集めはしていないけど、虎の大襖絵の御朱印は
思わず手に入れてしまいました。
本堂奥
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秘仏である、ご本尊毘沙門天様とその妻、吉祥天と五人の子供の一人善膩師童子が祀られています。
毘沙門天一家の三尊形式で、家族円満の守護がある。
また、毘沙門天が戦い、財力の神のため、今でもスポーツ選手や社長などが御祈祷に来ます。
通常拝観していません。
御本尊 毘沙門天立像(びしゃもんてん-りゅうぞう)
夢のお告げにて、東福寺の天井裏から発見されたご本尊。
毘沙門天の高さは約147.5cmの一木造。
平等院鳳凰堂の阿弥陀如来を作った定朝様(じょうちょうよう)の作品と考えられる。
左手に宝塔 右手に三叉戟を持った忿怒相を持っている。
吉祥天立像(きっしょうてん-りゅうぞう)
江戸時代の作品で、清水 隆慶によって作られました。像高は、104.4cm。
美と幸福を司る神とされ、 毘沙門天の妻です。
毘沙門天との間に五人の童子がおり 一家和合の神として祀られています。
善膩師童子立像(ぜんにし-どうじ-りゅうぞう)
江戸時代の作品で、吉祥天立像と同じく清水 隆慶によって作られました。像高96.5cm。
![たぬきくん](https://kitsune-hudou.com/wp-content/uploads/2021/10/fe16fdf3f2baf3fec10437dc74e20869.png)
江戸時代に、毘沙門天が発見されたあとに吉祥天と善膩師童子が彫られて、三尊形式になったのかな?
胎内厨子(毘沙門天三尊像)
平成21年の文化財調査時に毘沙門天の本尊の腰の部分に厨子が納められていることが分かりました。
高さ30cmの深紅に彩られた檜造りの厨子で、中から毘沙門天と吉祥天、善膩師童子が見つかりました。
2013年11月15日に、初の一般公開がされ、江戸中期以来250年間封印されていたことになります。
本寺の「秘仏中の秘仏」なんです。
厨子の公開は、2022年寅年の特別公開が9年ぶりでした。
厨子は、背中側から納められ、最初厨子の中身は毘沙門天(16.7cm)だけでしたが、一度厨子が開かれ後から吉祥天(9.4cm)、善膩師童子(8.4cm)が加えられたと考えられます。
中央の毘沙門天像は本尊と同じ平安中期の作とみられています。
両脇の吉祥天と善膩師童子の両像は京都の仏師が1763年に作り、厨子に加えたとされています。
![きつねくん](https://kitsune-hudou.com/wp-content/uploads/2021/10/kitune.png)
次拝観できるのは、2035年の寅年になると思います。
それまで、ご本尊 毘沙門天の胎内へ戻されます。
部屋の構造
秘仏の毘沙門天三尊像の部屋は、毘沙門天前が高く手前が低いように傾斜して畳が敷かれている。
これは、天の高みにいらっしゃる神々に近づけるよう一心に祈ることを体感してほしいとして作られたものです。
東の間
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北の庭園を眺められます。
西の間
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座禅や写経を行うことのある間です。
庭
吉祥紅葉(きっしょうもみじ)
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秋は吉祥天の美しさが宿ると言われる紅葉。
燃えるように赤く美しい。11月の末ごろが見ごろ。
吉祥天が宿ることから、美縁(心身から美しくなる)や良縁(素敵なご縁に巡り会える)があるとされ舞妓さんがお参りする隠れスポットでした。
![たぬきくん](https://kitsune-hudou.com/wp-content/uploads/2021/10/fe16fdf3f2baf3fec10437dc74e20869.png)
11月中旬は、まだ緑だったね。
石塔
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一切経を埋めたとされる石塔。
庭
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仏像
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![きつねくん](https://kitsune-hudou.com/wp-content/uploads/2021/10/kitune.png)
中央の間と、東の間に安置されています。
拝観可能です。
聖観音菩薩立像(しょうかんのん-ぼさつ-りゅうぞう)
平安時代の作品で、像高は103.2cm。
文殊菩薩坐像(もんじゅ-ぼさつ-ざぞう)
中央左手に安置。
平安時代の作品で、像高は71.1cm。
延命地蔵半跏像(えんめいじぞう-はんか-ぞう)
中央左手に安置。
半跏の状態で座られている地蔵菩薩様。
平安時代の作品で、像高は79.4cm。
大日如来坐像(だいにち-にょらい-ざぞう)
中央の間右手の中央に安置されている。
多聞天を向かって左手、広目天を向かって右手に安置され、三尊像となっている。
とても珍しい三尊形式です。
平安時代の作品で、像高は108.0cm。
多聞天立像(たもんてん-りゅうぞう)
鎌倉時代の作品で、 像高は78.0cm。
広目天立像(こうもくてん-りゅうぞう)
鎌倉時代の作品で、 像高は像高80.0cm。
七難七福図(しちなんしちふくず)
円山応挙作品。
現在1年に一幅ずつ、京都国立博物館にて修復中。
毘沙門天 曼荼羅(びしゃもんてん まんだら)
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毘沙門天を中心にした曼荼羅。
他の寺院では、例のない珍しい曼荼羅です。
毘沙門天を信仰していることを強く示しています。
作品は、江戸時代(文久元年:1862年)に田村宗立が版木を彫り作った作品です。
当時、田村宗立は16歳でした。
のちに、田村月樵と名前を変えています。
京都洋画の先駆者であり、日本画でもなければ西洋画でもない分野を広げ、日本の仏画への多大な貢献をした人物です。
![きつねくん](https://kitsune-hudou.com/wp-content/uploads/2021/10/kitune.png)
右下を拡大すると、
「宗立十六歳書」と書いてあるよ。
第一院
中央の四角の中には、毘沙門天の家族が描かれています。
最も中央に毘沙門天、その左右に控えるのが吉祥天と善膩師童子。
左上から時計周りにが獨健童子、那吒童子、最勝童子、常見童子です。
また、毘沙門天を足元で支えているのは、地天女と二体の鬼(尼藍婆、毘藍婆)。
第二院
次の四角には、眷属(部下)の夜叉の中で特に優れた 八大夜叉大将 が描かれています。
また、下の2体は、龍王 と 韋駄天 になります。
外院
一番外の四角には、八大夜叉大将に控える夜叉である 二十八使者 を描いてあります。
お手洗い
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庭の突き当りにあります。
拝観案内
通常非公開。年2回一般公開されます。
春季は予約制。
秋季は11月上旬から12月上旬まで一般公開。
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拝観時間(令和4年度参考)
〇令和4年11月12日(土)~12月4日(日)
拝観料(令和4年度参考)
〇大人:700円
〇中高生:300円
年中行事
座禅・写経
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![きつねくん](https://kitsune-hudou.com/wp-content/uploads/2021/10/kitune.png)
予約制で、座禅・写経体験ができるよ。
地図
公式HP
まとめ
- 東福寺の北を守護する毘沙門天堂。
- 奥の間に安置された御本尊の毘沙門天は、秘仏で通常非公開。
- 御本尊の毘沙門天の胎内厨子はさらに秘仏であり、寅年しか見ることが出来ない。
- 吉祥天のように、良縁と美を運んでくる吉祥天紅葉が有名。
- ネット予約で座禅・写経ができる。
- 虎の大襖絵は、見応えあり。
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